外出はできる・学校は行けない…不登校児の心を理解するのに役立つ「認知行動療法」

松丸未来

不登校児の数が過去最多と言われています。学校へ行けない子の心の中では、一体何が起こっているのでしょうか。
心の不調の正体を知るのに役立つ「認知行動療法」について解説します。


※本稿は、 松丸未来監修 『思春期の心理を知ろう!』(PHP研究所)から一部抜粋・編集したものです。

知らないうちに積み重なる「心の不調」

のどが痛くて、熱っぽいと感じたらどうしますか?

身体の不調を感じたら、熱を測ったりうがいをしたりして、その日はゆっくりと過ごすでしょう。

しかし、私たちは、不安や落ち込み、怒りといった「心の不調」には、うまく対処できません。令和4年度の小中学校の不登校児童生徒数は29万9048人で過去最多を記録しました(前年度は24万4940人)。小学校では約59人に1人、中学校では約17人に1人の割合です。不登校の一番の理由は「不安・無気力」で、全体の51.8%をしめています。

私たちは、知らず知らずのうちに心の不調を積み重ねて、身体が言うことを聞かなくなるまで、がまんすることがあります。自分のやりたいこと、すべきことをするには、身体の健康と同じくらい心の健康も大事です。そのためには、心のはたらきを理解することが必要です。

不登校児の心の中で起こっている事

Aさんは、教室に入るのが苦手です。お店や街中は平気で歩けるのに「知っている人がいる教室」にはこわくて入れないと言います。その理由は「自分はみんなとちがうから。変だと思われているから」。「知っている人」がいる教室と「知らない人」だらけのお店や街中で、Aさんの考えは変わります。

このようなAさんの心を理解するには、「認知行動療法」のやり方が役に立ちます。認知行動療法では、ある出来事に対して、認知(考え)、感情(気持ち)、身体、行動がどのように反応するかを客観的に見ます。認知行動療法の視点でAさんを見ると、「知っている人」がいる教室に入る前は「自分は変だと思われている」という考えをもち、教室に入ると「恐怖」や「不安」の気持ちから「力が入った」身体になり、教室に入ることを「避ける」という行動を起こします。その結果、教室に入らなかったAさんはホッとして、心の安定を保つことができます。

心の不調は早めの対処が大切

Aさんのこの行動は、1つの対処法としては有効です。ただし、Aさんがこれを毎日、何年も続けると、やがてやりたいこと、すべきことができなくなり、自分を否定したり、強い不安感や大きな落ち込みを感じたりするようになります。身体の不調と同じく、心の不調も、それに気づいたら、早めに対処することが大事なのです。

Aさんの「自分が変だと思われている」という考えは、思い込みにすぎないかもしれません。実際は、Aさんにやさしく接し、Aさんを気にかける友達がいて、Aさんをほめる先生がいるかもしれません。このように、視野を広げて物事を見ると、気持ちがおだやかになったり、満たされたりします。そして、やりがいや楽しい側面に目が向くようになり、できなかったことができるようになります。

悩むことは、自分の視野を広げるよいチャンスです。心の不調に早めに気づき、考えを柔軟にし、視野を広げ、勇気を出して行動に移してください。

思春期の心理を知ろう! 心の不調の原因と自分でできる対処法

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